辞書で見る
辞書コンピューターは、5つの機関本部でコンピューター・データベースにリンクされている高度暗号化されたUKUSA通信経由で接続されている。辞書によって選択されたすべての傍受するメッセージがどこに行き着くかといえば、ここである。毎朝、ワシントン、オタワ、チェルトナム、キャンベラ、ウェリントンにおいて特別 に「教化された」信号諜報分析者は、それらのコンピューター・ターミナルでログオンし、辞書システムに入る。自分のセキュリティ・パスワードを入力してから、それぞれ4桁のコードを持つデータベースにおいて利用可能な傍受の別 々のカテゴリーをリストアップするディレクトリに着く。例えば、1911は、ラテンアメリカからの日本の外交ケーブルであるとする(それはカナダのCSEによって処理された)。3848はナイジェリア発着の政治的通信。8182は暗号技術の配布に関するすべてのメッセージ、といった具合である。
彼らは主題カテゴリーを選択し、その主題についてエシュロン・ネットでどれくらいのメッセージがつかまえられたかを示す「検索結果 」を得て、それからその日の仕事が始まる。分析者は、傍受したファクス、電子メールメッセージなどの画面 を次から次へとスクロールしていき、メッセージが報告する価値を持っているように思えたならば、それを作業するために残りのものから選び出す。もしそれが英語でなければ、翻訳されて、UKUSA内のどこででも作られる諜報レポートの標準形式に書き込まれる。それは、全体ならば「報告」、要約ならば「要点」ということになる。情報統制高度に組織化されたシステムは、それぞれのステーションで何が検索され、だれがそれにアクセスできるかを統制するよう開発された。これは、エシュロン・オペレーションの中心にあって、以下のように働く。
個々のステーションの辞書コンピュータは、単に、検索すべきキーワードの長いリストを持っているわけではない。また、参加している機関が手を伸ばせば届くことのできるような巨大なデータベースの中にすべての情報を送るわけでもない。それはもっと制御されている。
検索リストは、4ケタで示された同じカテゴリーの中に組織化されている。それぞれの政府機関は、ネットワークのために諜報を作り出すための責務に従って、自分のカテゴリーを決定する。GCSBにとって、これは南太平洋政府、日本の外交、ロシアの南極活動などを意味する。
それから政府機関は、それぞれのカテゴリーでの選択のために、およそ10から50のキーワードを決める。キーワードは人・船・組織の名前、国名、主題名などである。それはまた、標的となるあらゆる個人、ビジネス、組織、政府事務所の既知のテレックスやファクス番号やインターネット・アドレスを含む。これらは一般 にメッセージテキストの一部として書かれているため、辞書コンピュータによって容易に識別 される。
政府機関は、関心ある通信をふるいにかける補助として、キーワードの組合わせも指定する。例えば、単語「サンティアゴ」と「支援」の両方を含んでいる外交ケーブル、あるいは、「サンティアゴ」を含んでいるが「領事」は含まないケーブル(領事の定常通信を避けるため)を検索するかもしれない。辞書コンピュータに置かれるのは、これらの特定のカテゴリー下における、単語、数(と組み合わせ)のセットだ (5つの政府機関の辞書マネージャーと呼ばれる職員が入って、それぞれの政府機関のためのキーワード検索リストを更新する)。
システム全体は、NSAによって考案され、他の政府機関によって完全採用された。辞書コンピューターは、入ってくるメッセージをすべて検索し、政府機関のキーワードのいずれかを含むものを見つければいつでも、それを選択する。同時に、コンピューターは、それが送られるどの政府機関においても、読む分析者にそれがどこから来たか、何であるかをわかるように、自動的に、傍受の時間と場所といった技術的詳細を傍受内容に自動的に注釈する。最終的に、コンピュータはメッセージ・テキストの一番下に4桁のコード(そのメッセージのキーワードに対応したカテゴリー)を書く。これは重要だ。それは、すべての傍受メッセージが、どこかの政府機関本部のデータベースに入れられるとき、特定の主題についてのメッセージが再び置かれうるということを意味する。後で、辞書システムを使っている分析者が、自分の欲するカテゴリーの4桁のコードを選ぶと、コンピューターは、全メッセージの中から、その数のタグを付けられたものだけを検索する。
このシステムは、それぞれの政府機関は自分自身の数からのみエシュロン・システムによる諜報を得ることになるため、全世界的なネットワークからどの政府機関が何を手に入れるかを制御するのには極めて効率的である。システムからもたらされた未加工の諜報が、他の政府機関にアクセスされることはない。例えば、 GCSBの諜報成果の大部分は主にUKUSA同盟に送達されるはずだが、ニュージーランドはエシュロン・ネットワーク全体にアクセス権を持つわけではない。それが有するアクセス権は厳密に制御されている。ニュージーランド諜報士官はこう説明した。「政府機関はすべて、お互いの辞書に数を申し込むことができる。一番扱い難いのはアメリカ人だ……。彼らがこちらのために実行する場合には、自分たち自身の興味対象でなければずいぶん飛ばしてしまうのだから」
同盟の中での規模と役割という点で、ただ一つの機関だけが、エシュロンシステムの完全な潜在能力へのアクセス権を有する。それは、これを組み立てた機関である。システムは何のために使われているのか? 公的な「議論」を聞いている人なら誰でも、冷戦終結意以来、巨大なUKUSA諜報マシーンの鍵となる標的は、テロリズム、兵器拡散、経済諜報であると想像することだろう。経済諜報が非常に重要になったという意見は、特に、冷戦後の予算を維持することに懸命な諜報政府機関によって入念に洗練されてきた。それは、多くの諜報についての議論で常識とされている。しかし、私は、現在、NSAのような組織にとって、これらが現在も主要な諜報であるという証拠は見いだせなかった。 |